
甲状腺疾患
甲状腺疾患
甲状腺は、喉ぼとけの直下に位置し、蝶が羽根を広げたような形をしている臓器です。その重さは通常10~20g程度で、右葉と左葉からなり、気管を取り囲むように位置しています。この臓器は、全身の新陳代謝や成長の促進に関与するホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌します。
甲状腺疾患の病気が起こる背景には、いくつかの代表的な原因があります。
甲状腺疾患は、ホルモンが「多すぎる場合」「少なすぎる場合」で異なる症状が出ます。
次のような症状に心当たりのある方は、検査をおすすめします。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、体の代謝が異常に活発になる病気です。特に多いのは「バセドウ病」で、自己免疫の異常によって甲状腺が刺激されることで起こります。
甲状腺ホルモン(FT3、FT4)
基準値を超えているかを確認。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)
通常、バセドウ病では低下。
TSHレセプター抗体(TRAb)
バセドウ病の特徴的な抗体の有無を確認。
バセドウ病の治療は、まず抗甲状腺薬としてメルカゾールまたはプロパジール(チウラジール)を使用して、血液中の甲状腺ホルモンの値を正常に戻すことです。しかし、これらの薬剤は無顆粒球症や重篤な肝機能障害などを引き起こすことがあります。そのため、通常治療を開始してから2か月の間は、2週間ごとに通院し血液検査を受ける必要があります。特に、抗甲状腺薬を服用中に38℃以上の熱が出た場合は抗甲状腺薬を中止し、直ちに医療機関を受診してください。
また、抗甲状腺薬の治療がうまくいかないときや、副作用のために抗甲状腺薬を服用できない場合には、甲状腺専門病院でアイソトープ治療(放射線性ヨウ素内用療法)または手術を行うことがあります。
甲状腺ホルモンが不足し、代謝が低下する病気です。もっとも多いのは「橋本病(慢性甲状腺炎)」で、免疫が甲状腺を攻撃することでホルモンの分泌が低下します。
甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の測定
甲状腺ホルモンの値を測定し、機能低下の有無を確認します。
甲状腺機能が正常であれば、治療は必要ありません。ですが、甲状腺機能低下症があれば甲状腺ホルモン剤であるチラーヂンの服用が必要となります。また、ヨウ素(ヨード)の過剰摂取が疑われる場合は、ヨウ素を含むうがい薬(イソジンなど)の使用を中止し、昆布などヨウ素を多く含む食品の摂取を控えていただく必要があります。
首のしこりや飲み込みにくさ、声のかすれがみられ、甲状腺にしこり(結節)ができる病気です。結節性甲状腺腺(甲状腺のしこり)は95%以上が良性です。しかしながら、稀にがんを合併したり、大きくなっていくことがあります。そのため、半年〜1年に1回甲状腺エコー検査を受けると良いとされています。
甲状腺に炎症が生じ、首の前側に比較的強い痛みがでる病気です。原因は、ウイルスが関与していると考えられていますが、まだはっきりとしたことは分かっていません。別名「甲状腺のかぜ」とも言われ、甲状腺の細胞が壊れることで、その中にある甲状腺ホルモンが血液中に流出します。
そのため甲状腺ホルモンは一時的に過剰になり、バセドウ病よりは症状が軽めですがイライラ感、動悸、発汗過多などの症状が生じます。血液検査と甲状腺エコー検査で診断し、治療は軽症であればロキソニンで治療することもありますが、多くの場合は甲状腺の炎症を早く抑えるためにステロイドを用います。
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