
花粉症診療
花粉症診療
ダニやハウスダストなどが原因となる通年性アレルギーは季節に関係なくみられますが、花粉症は一年中花粉が飛散しているわけではありません。アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎の一種であり、スギやヒノキなどの花粉がアレルゲン(抗原)となって、目のかゆみ・異物感・充血、涙、立て続けのくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こします。
春先はスギ、ヒノキ花粉、夏はイネ科、秋はブタクサなど、季節によって花粉の種類が異なりますが、複数の花粉にアレルギーがみられる方も少なくありません。また、近年は発症が低年齢化しており、以前までは少ないといわれていた小さいお子様にもよくみられるようになっています。アレルギー性鼻炎があると鼻が詰まって口呼吸になり、風邪もひきやすくなります。鼻炎を放っておくと副鼻腔炎(蓄のう症)や喘息の原因になることもあるので注意が必要です。
花粉症の症状は水のような「鼻水」と、繰り返す「くしゃみ」、鼻づまりが3大主徴です。くしゃみや鼻水などの症状により頻繁に鼻をかむことで、粘膜を傷つけて鼻出血が起こる場合もあります。目のかゆみを伴うことも多く、かゆくて目をこすったりしているうちに痛みを伴い、ゴロゴロとした異物感を生じることもあります。放っておくと結膜が充血してまぶたが腫れ、目の状態によっては、まぶしく感じたり、涙や目やにが出たり、見えにくいといった症状が現われることもあります。ほかにも咳、喉・皮膚のかゆみ、口の中の腫れ、ひどい場合には頭痛、倦怠感、微熱、下痢、体や顔のほてりなどを伴うこともあります。
これらの不快な症状によって、勉強や仕事、家事に集中できなかったり、よく眠れなかったり、イライラしたりするなど、日常生活に支障が出てきます。そのため、花粉症はしっかりと治療して症状を抑えることが大切です。
診断は、医師による問診が主体になります。発症時期、家族のアレルギー歴、症状の内容、症状の強さ、ほかのアレルギーを併発しているかといった具体的な内容を詳しくうかがいます。
症状のうち、くしゃみと鼻水は密接に関わり合っているので両者をまとめて「くしゃみ・鼻水型」とし、鼻づまりが他の症状にくらべて強いときは「鼻づまり(鼻閉)型」、症状が同じくらいのときは「充全型」に分類されます。重症度はそれぞれの症状の強さから判定します。また、どのアレルゲンに対するアレルギーなのかを特定するために血液検査を行います。
CAP RAST法
血液を採取し試験管内でアレルゲンに対する特異的IgE抗体を検出します。検査したいアレルゲンを13項目まで選択できます。
RIST法
不特定のアレルゲンへの反応の程度を調べる非特異的IgE検査です。36項目を検査するMAST36、39項目を検査するView39などがあります。
薬物療法
薬物療法では鼻水を抑える抗ヒスタミン薬や、鼻の炎症を抑える点鼻ステロイド薬、鼻づまりを改善する作用があるロイコトリエン受容体拮抗薬などが用いられます。目の症状には、抗ヒスタミン点眼薬などが用いられます。花粉飛散量が増えて症状が悪化してきたら、目のアレルギー性炎症に対して点眼ステロイド薬を用いる場合もあります。これらによって目のかゆみや充血の症状を改善します。
手術療法
手術療法には、鼻の粘膜をレーザーで凝固する下鼻甲介粘膜焼灼術などがあります。薬物療法でも症状が抑えられない場合などに考慮される治療です。必要時、耳鼻科をご紹介します。
アレルゲン免疫療法
アレルゲン免疫療法は、減感作療法とも呼ばれています。原因となるアレルゲンを低濃度から体内に取り込み、徐々に濃度を高めていき慣れさせることで症状を緩和していく治療法です。アレルギー体質の改善を促す根本的治療として近年注目されています。皮下注射で行う方法と舌下にアレルゲン(舌下錠)をとどめて行う舌下免疫療法があり、皮下注射は花粉、ダニ、カビなど、舌下錠は日本ではスギ花粉(シダキュア®)とダニ(ミティキュア®)が保険適用になっています。
治療期間が3~5年と根気のいる治療ですが、薬物療法で副作用が出るために治療が継続できない方や、薬物療法だけでは症状が抑えられないような方に、この免疫療法が考慮されます。
効果を実感できるまでに2年以上の治療期間が必要です。また、全ての方に効果があるわけではなく、効果を得られない可能性があります。さらに、治療効果があるかどうかを事前に知ることはできません。
安全性が高い治療法ですが、アレルゲンを体内に入れるためアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。医師に指示された通りに使用することが不可欠であり、説明を受けて十分にご理解いただいた上で治療を開始する必要があります。
初回投与は、クリニック内で行い、その後30分間院内で過ごして様子を確認します。翌日以降の投与はご自宅で可能です。
スギ花粉の舌下免疫療法は、副作用が強く出る可能性があるため花粉の飛散時期にスタートすることはできません。そのため、治療開始時期は、6~12月となります。いったん適切な時期に治療を開始したら、花粉飛散時期にも治療を続けます。なお、ダニの舌下免疫療法はいつでもはじめることができます。
5歳未満・65歳以上、重度の気管支喘息・がん・免疫系疾患がある、治療開始時点で妊娠されている、免疫療法で強い副作用が現れたことがあるなどの場合や、医師が適切ではないと判断したケースでは舌下免疫療法を行うことはできません。
花粉飛散時期にはテレビ・ラジオのニュース、インターネット、スマホアプリなどで花粉飛散予測が確認できます。花粉が多いときは外出を控え、外出せざるを得ないときには事前に花粉情報から対策を立てましょう。
花粉は全身に付着しやすいため、外出時は、頭髪は帽子、目・鼻はメガネやマスク、首はマフラーやスカーフで付着を防ぎましょう。また、上着は花粉が付着しにくい表面がツルツルした生地のものを選びましょう。
花粉の飛散が多い時は、洗濯物は外に干さないようにしましょう。家に入る時は衣服についた花粉を玄関前で払い落とし、すぐに着替えて洗顔やうがいなどで体から花粉を取り除きます。人工涙液を点眼して花粉を洗い流すといった対策もあります。
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